博士前期課程(2017年度修了)

王 宇斐
 
出身:中華人民共和国西安市
    2016年3月 明治大学農学部食料環境政策学科卒業
 研究テーマ:都市農業、市民農園
 →2017年度より食料農業社会学研究室(大内雅利教授)
 
周 依多
 
出身:中華人民共和国
    2014年7月 中国上海交通大学農業・生物学部卒業
 研究テーマ:、温州みかん産地の景観、地域ブランド、有田みかん
 → 2017年度より国際開発論研究室(池上彰英教授)


博士前期課程(2015年度修了、2016年度博士後期課程退学)


福田 恭礼(Fukuda Takayoshi)
出身:東京都足立区
研究テーマ:原発事故避難者による営農再開の実態解明
キーワード:福島第一原発、飯舘村、被害構造、営農再開
福島第一原発事故を取り上げ、原発事故が被害者に与える影響に焦点を当てています。
市田先生の下で社会学の視点から研究していきたいと思っています。

修士論文「原発事故の影響による営農者の被害実態の実証的研究―営農再開者を事例に―」
(2016年2月26日提出)                        

 【要旨】 
  本論文は2011年3月11日に発生した東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所
事故の被災地である福島県相馬郡飯舘村から避難をし、その避難先で営農を再開している事
例に焦点を当てている。本論文の課題の一つは、営農者の被害実態および営農再開の経緯を
明らかにすることである。もう一つは、事例調査の結果分析から、将来、帰村した際の地域の
復興、地域農業再建の可能性を考察することである。そのため、今なお避難指示が解除され
ない飯舘村の村民であり、避難先で営農を再開している方々4名に聴取調査を行った。本論文
では、この4名の事例調査結果に基づき、被害実態および営農再開の経緯を分析し、その上で
帰村後の地域復興、地域農業再建の可能性を考察する(以上、第1章 課題の設定)。
 第2章 原発被害の特質では、原発被害が、水俣病等、過去の公害事件による被害構造と異
なり、避難勧告による「地域社会の崩壊」から「生活水準の低下」へ、さらに個々人の自己責任に
基づく選択が迫られる「個人化」という経路を辿ることを示した。
 第3章 原発被害賠償の概要では、関連の法制度を概説した上で、今回の事故による農業に
関する被害はJAを通じて東京電力に対して損害賠償請求を行っていること、損害賠償項目は
休業補償損害、農畜産物廃棄損害、その他の営業損害(風評被害等)の3つであることを示した。
 第4章 飯舘村の被害では、事故前の飯舘村の概況、原発事故による避難の経緯、営農者に
対する損害賠償の問題点を示した。
 第5章 営農再開事例の分析では、KM氏(原発事故前、米、野菜、肉牛を中心に生産と産直を
行なっていたが、事故後は宮城県内で自給的に営農を再開している事例)、A氏(事故前は施設
園芸(花卉)としいたけ、事故後は福島市内で施設を再建し、トルコギキョウとストックを周年栽培
している事例)、Y氏(事故前は水田と繁殖牛の複合経営、事故後は当初、県南部、2014年10月
以降は福島市内で繁殖牛経営を再開している事例)、W氏(事故前、個人で農産物加工販売を
行っていたが、事故後は福島市内にて同氏と同様に避難してきた阿武隈地域の農村女性ととも
に「かーちゃんの力・プロジェクト協議会」を立ち上げ、農産物加工販売、阿武隈地域の食文化伝
承を行なっている事例)について、それぞれ聴取調査結果に基づき被害実態と営農再開経緯に
ついて記述した。
 第6章 結論では、第1章で設定した課題に沿い、営農再開者の被害実態および営農再開経緯
について、さらに帰村した際の地域復興、地域農業再建の可能性について考察した。全村避難と
いう状況の中で営農再開を実現させた要因として、個々の置かれた状況に合った営農タイプの
選択、避難先での農地の確保、再開に当たって必要となる資金の確保、さらに損害賠償が挙げら
れる。帰村した場合、営農再開の可能性が高い部門は施設園芸(野菜、花卉)、畜産(繁殖牛)で
あると推察する。飯舘村の花卉、畜産(飯舘牛)はその品質に定評があった。したがって、これらの
農畜産物の生産再開が地域農業再建に繋がると考える。さらに、現在、帰村と営農再開を希望し
ている中高年世代は、若者世代にとってもモデルケースになりうると考えられる。飯舘村が今後、
地域復興を実現するためには、農業を支援し、再建するための仕組みを作ることが重要である。

【研究成果】 福田恭礼・市田知子「原発事故避難者による営農再開と展望: 福島県相馬郡飯舘村
の事例分析」明治大学農学部研究報告 66(1), 1-21, 2017-2



博士前期課程(2011年度修了)

瀬戸 啓太郎(Seto Keitaro)
出身地:神奈川県横浜市
研究テーマ:高齢化問題(都市および農村における地域福祉・家族を焦点に)
キーワード:少子高齢化、地域福祉、家族
少子高齢化問題を取り上げ、特に地域福祉、家族に与える影響に焦点を当てています。
市田先生の下で社会学的に物事を研究していきたいと思っています。

修士論文「地域の重層的構造と活性化に関する考察―栃木県芳賀郡茂木町を事例に―」
(2012年2月27日提出)

                        
 【要旨】 
  農業経済学、農村社会学の分野では近年、「地域活性化は集落を超える範囲で行うべ
き」という見解が示されている。本論文では、このような従来の見解を中山間農業地域の
実態を踏まえて検証するために地域活性化の範囲に焦点を当て、地域の重層的構造と活性
化の内容との関連を分析することを目的とする(以上、第一章)。事例調査の対象地であ
る栃木県芳賀郡茂木町は林野率64%の中山間地域である。同町は高度成長期まで葉タバ
コの生産地として栄えていたが、以降は現在まで人口が半減している。1980年代、町北
部の一集落で住民自らによる「ゆずの里」(ゆずのオーナー制度)の取組がなされた。以
来、この「ゆずの里」がモデルとなり、町役場と住民の共同により集落単位で地域資源を
活用した活動を企画、実施していくことになる。第二章では、こうした活動の単位となる
集落、大字、小学校区、旧村がどのような経緯から構成され、どのような特徴をもつのか
を分析した。また、第三章では、茂木町全体の活性化事例を、その範囲に従って「集落単体
型」と「複数集落型」(大字、小学校区)に類型化し、それぞれの利点、欠点を整理した。
 第四章では、「集落単体型」と「複数集落型」の両タイプがある大字山内の実態分析を行い、
「集落単体型」である甲集落の事例では自治会活動の形骸化を補う形で棚田のオーナー制
の活動がなされていること、一方、「複数集落型」の事例では集落の範囲を超えた農地貸借
関係に基づき観光農園(フルーツ村)の運営がなされていることを明らかにした。
 第五章では、とくに第三章、第四章の分析結果を踏まえて、集落自治と活性化の活動はその
範囲の広狭にかかわらず、相互に補完していること、また、集落と集落を超える範囲(大字、
小学校区)の両者の補完関係は中山間地域の再生のために重要な役割を果たす可能性が
あることを示唆した。


博士前期課程(2009年度修了)

飯山 洋平(Iiyama Yohei)
都市農業,とくに卒論で取り上げた横浜市を中心に,農業専用地区の変化,
耕作放棄防止のための市民農園,援農ボランテイア等の取り組みについて
調査研究を行っています。

 修士論文「都市近郊地域における援農組織に関する考察」 (2010年2月26日提出)

 【要旨】           
  都市近郊地域においては、農家の高齢化や兼業化に起因する耕作放棄および
農地減少が目立ってきている。本論文では、近年、市民参加による農地の保全活動の
一つとして各地で注目されている援農システムを取り上げ、それが農地保全にどの
ように貢献しうるのかを事例調査を通して考察した。既存研究によると、援農者に
作業を依頼している農家にとって最も重要なのは「援農者の安定的供給」であること、
また、「ボランティア」といえども有償である場合が関東地域では4割近いことから、
本論文はとくに有償の援農システムに焦点を当て、第一に援農システムが有償制を
導入する背景と課題、第二に有償援農の利用農家に対する影響や効果、第三に、
農地保全に有償援農システムが貢献する可能性の検討という3つの課題を設定した
(第1章)。事例調査はNPO法人の「たがやす」(町田市)と「すずしろ」(八王子市)、
さらに横浜市の任意団体「はま農楽(のーら)」を対象とした。調査分析の結果、第一に、
いずれの援農システムも援農者に対する交通費や食費の弁済のために有償制を導入
している。ただし、労働関連法令との兼ね合いから、労働者との明確な区別を必要と
している(第2章、第3章)。第二に、「たがやす」利用農家へのアンケートと聴き取りの
結果、農家にとって有償制が気兼ねない援農利用の方法として有効であることが明ら
かになった(第4章)。第三に、援農ボランティアに少額の弁済を行うことを通じて継続性
を確保し、農業者の耕作を支援していることから都市農地の保全に貢献しているものと
考えうる。今後、援農システムが普及するためには、利用農家、援農者相互が過剰な
負担とならないシステムの構築が求められる。




2009年11月22日(日)                    
 生明祭の2日目の夕方、9月にOB会と称して集まったメンバー(1期生2名、2期生2名、
3期生1名)+大学院の面々で飲み会兼誕生日のお祝いをしました。

















2008年
12月12日(金)
 プレゼミ生9名,3,4年生も一緒に「大根一本?億円」で話題になった渋谷区の区民菜園を
見に行きました。まずは公園通近くの渋谷区神南分庁舎にある環境保全課を訪ね,担当の方
から一通り説明をうかがいました。少子化により統廃合された学校の跡地,区の体育館の跡地
利用をどうするか。道路に面していないところでは緑地以外の使い道がなかったことから,区長
の強い意向もあって区民菜園(「可食緑地」)として利用することになりました。今年5月のことで
す。分庁舎から歩いて10分程度の「美竹菜園」は,大向小学校と統合された渋谷小学校の跡地
にあります。現在は特養ホームですが,その一部を区民菜園に提供しています。約520平米の
土地を25区画(一区画10平米)に区切り,高齢者世帯,子育て世帯,単身世帯などに月1000円
で貸し出しています。高いビルに囲まれ,冬日のせいもあって日当たりがあまりよくないのが気
になりましたが,冬野菜からベリー類まで所狭しと植えられています。近所づきあいはなくても,
区画のお隣さん同士では自然と会話がはずむという話が印象的でした。
(12月21日記)


9月12日(金) 
 院生5名,3年生3名と一緒に神奈川県南足柄市に酔芙蓉(すいふよう)を見に行き
ました。南足柄市千津島地区は生田校舎から東名高速経由で約1時間, 混住化,
兼業化の進んだ水田地帯ですが,1990年からの圃場整備事業実施を 契機に,
「都市近郊において次世代が誇りをもって受け継げるような良好な 環境作り」を
めざして地域住民が一丸となっています。目先の利益や既成概念にとらわれない
整備方法,たとえば当時,三面コンクリート張りが当たり前だった用水路を石積み
にしたり,地域の人や資材を活用して公園を作ったりしました。通常,圃場整備終
了後は「金の切れ目が縁の切れ目」 で地域のまとまりがなくなるものですが,ここ
では平成7年,「花による里づくり」が発案され,市職員の古屋富雄さんのアドバイス
もあって酔芙蓉,足柄桜(はるめき)が農道に,さらには畦畔に彼岸花が植えられ,
季節に応じて花を楽しめるようになりました。
 アイデアマンである古屋さんは,さらに同市内の岩原地区で遊休農地約2haを集積
し,ザルギク,ムクゲ,ブルーベリーなどを植栽し,「あしがらユートピア農園」という
市民に開かれた農園を開設しています。「東京から一番近い田舎」の夢はまだまだ
膨らみます。(9月17日記)
 
 昼間は白かったのが夕方5時頃にはこのように紅く染まりました。
 

8月28日(木)
 4年生の卒論研究のため,M1〜D3の院生も一緒に練馬区大泉の白石農
園を訪ねま
した。現在,農林水産省が全国の大都市圏に広げようとしている「体験農園」(市民農園
の一種だが,農地所有者である経営者が利用者に土作りや栽培方法を指導するタイプの
農園)の先駆者であるほか,多方面に活躍していらっしゃる白石好孝さん,俊子さんご
夫妻ですが,今回はとくに精神障害者の受入状況についてお話をうかがいました。
白石農園では10年ほど前から東京都の保健センターから紹介された精神障害者を常
時3名程度受け入れ,最長で3年間,農園の作業全般を手伝ってもらい,社会復帰の手
助けをしています。毎日,土や作物に触れ,体を動かすことにより精神衛生上,よい
効果をもたらすという,いわゆる園芸療法の手法です。最近では,鬱病による休職者を
かかえる大企業や,そうした患者の治療にあたっている精神科医からの依頼もあり,
企業出資による特定子会社設立のオファーに関連する話もあったとか。これまで
巣立った人たちは30名あまり,うち何らかの仕事に就いた人は3割弱とのこと。
いざ就労となると大きな壁にぶちあたります。園芸療法の効果を活かすことができ
ないのは残念なことです。
 私(市田)自身は数年前に一度,うかがったことがあるのですが,その時よりも
直売コーナーが充実していて,以前,ドイツで見たようなコインロッカー方式の卵
の販売機までありました。客足がよく,この日も訪問した11時頃にはすでに完売
状態でした。区内の小学校での食育のために豚(東京X)や鶏を飼うようになった
のは3年前とのことです。
 体験農園では中高年の利用者数名が畑仕事に精を出していました。ナス,ししとう,
ピーマン,オクラなどはまだ実をたくさんつけていますが,トマトは撤去寸前です。
ほどなくして冬野菜の準備が始まることでしょう。(8月30日記)